2025-04-05
【極楽鼠浄土 ライブレポ】④ヤバイTシャツ屋さん
④ 16:00〜 ヤバイTシャツ屋さん
ここまではデビュー時から一緒にライブをやってきた同世代バンドが続いたが、ここで後輩が登場。ある意味では直系というような存在であるヤバイTシャツ屋さんが後半の火蓋を切って落とす。なんだかアリーナスタンディングエリアの観客たちもより身軽になっているような感すらある。
サウンドチェックの段階で曲を連発するのもヤバTのフェスのスタイルであるが、その中にキュウソの「家」のカバーを挟むというあたりも流石としか言えない。なんだかライブが始まる前から凄く得をした気分にもなるというのも含めて。
おなじみの「はじまるよ〜」のSEでメンバー3人がステージに登場すると、こやまたくや(ギター&ボーカル)が
「兵庫代表!キュウソネコカミの最強の後輩、ヤバイTシャツ屋さんです!」
といつもとは違うこの日だけの挨拶をするというのもキュウソのフェスならではだが、照明が赤と青に目まぐるしく明滅する1曲目の「あつまれ!パーティーピーポー」からスタートすると客席の空気は一変する。というのはここまではなかったダイブやサークルなどが発生しているからであり、一気にライブハウスの激しいノリになっていくということである。もちろんサビでは観客が大合唱し、手を左右に振りまくる。もりもりもと(ドラム)も「オイ!オイ!」と観客を煽りまくることによってさらに客席は熱さを増していく。
さらにはイントロの演奏と手拍子によって高まりまくっていく「Tank-top of the world」では曲のパンクさによってさらにダイバーが多くなっていく。この日も鮮やかな金髪にピンクの道重さゆみTシャツのありぼぼ(ベース&ボーカル)の歌唱もさらに熱い感情を感じさせてくれるようになるのもこの曲ならではであるが、そんな熱すぎる中で演奏された「メロコアバンドのアルバムの3曲目くらいによく収録されている感じの曲」では間奏部分でこやまが観客を座らせてから一気にジャンプさせるという、超満員のアリーナスタンディングブロックの人たちは全員座るのにかなり時間がかかりそうなのに、割とすんなり全員が座ることができるというのは顧客(ヤバTファンの総称)たちの協力っぷりによるものだと言ってもいいだろう。
そんなヤバTの最新曲が「ええがな」であり、すでにライブでは毎回のように演奏されていることによってさらにパンクに進化してきた曲とも言えるのだけど、そのタイトルからして関西弁であるだけに関西のライブ会場で聴くことによってよりハマっているような感じすらある。それはノリがやっぱり合っているというような感じがするというか。
さらには早くも「ハッピーウェディング前ソング」というキラーチューンも演奏されることによってやはり大合唱を巻き起こすと、最後のサビではリフトした人たちが次々にダイブしていく。細かくブロックが分かれているために果たして後ろの方はどうなるんだろうかとも思っていたが、後ろの方でもダイバーは続出していたし、しっかりそれをキャッチするセキュリティが多数配置されているというフェス側の体制もさすがである。
「ソゴウ会発足おめでとうございます!」
「オカザワさん、新しいギター購入おめでとうございます!」
「ヨコタさん結婚おめでとうございます!」
と色々ズレまくってキュウソのおめでたい話題によってこの日の開催を祝すと、
「今日のラインナップ見てビビったわ〜。今日の客席の盛り上がりっぷりを見てビビったわ〜。ビビった!?」
と繋げて演奏されたのはもちろんキュウソの「ビビった」のカバーというヤバTなりのキュウソへの愛の示し方。しかもこやまとありぼぼのツインボーカルになっているというあたりがセイヤとヨコタのツインボーカルを踏襲している。しかもそれをヤバTなりのスリーピースのパンク・メロコアにアレンジしながらも、原曲のらしさを全く変えることがない。こうして聴いているとヤバTによるカバーは本当にそのバランスが秀逸だなと改めて感心してしまうほどだ。曲中の通称「クソワロダンス」部分ではキュウソのソゴウがステージに登場して振り付けを踊るというのもこの日ならではのコラボであり、もちろんダイバーも続出するのだが最後のサビ前の「なめんじゃねぇ!」はこやまがめちゃくちゃ気持ち良さそうに言っているような感じがしていた。
イントロからメンバーに合わせたリズムの手拍子が巻き起こると、こやまがいまだに「新曲」と言ってから演奏する「癒着☆NIGHT」と続くことによってやはりダイバーが続出するのだが、最後にはこやまがリフトしている人たちに向かって
「うまいことやろうぜー!」
と言っているようにすら感じられる。それはこの曲で今夜だけめちゃくちゃになることによってこの日が最高なものになるということを信じているというような。ハイトーンの限界に挑むようなありぼぼのボーカルも本当に伸びやかである。
そうしてキュウソのフェスでありながらもヤバTのライブだからこその幸せな空気を作り出しているのだが、それが極まるのは「NO MONEY DANCE」で、コーラスフレーズで大合唱が起こるのがこの両バンドの親和性、ファン同士の親和性を感じさせてくれるし、やはりダイブとサークルが発生しまくるのもそうである。そこにあるのは思いやりとマナーというキュウソがずっと大切にしてきたものをヤバTとそのファンたちもが大切にしてきたということである。
そんなキュウソへの思いをこやまは
「コミックバンドとはいかないけど、ユーモアがある表現をしているロックバンドっていう道をキュウソが切り拓いてくれた」
と語る。それは少なからずキュウソが切り拓いたその道を自分たちが歩いてきたという感覚があるからなのだろうけれど、さらには
「まだ誰もヤバTの音楽に見向きもしなかった時に、セイヤさんがラジオでヤバTの曲をかけてくれた。ライバルっていうか、同業他社みたいなヤバTの曲をかけてくれたのが本当に嬉しかった」
と言って演奏されたのはその時にセイヤがかけてくれた曲だという「喜志駅周辺なんもない」で、曲間にはもちろん
「キュウソネコカミカッコいい」
などのキュウソを褒めまくるコール&レスポンスが展開されるのだが、普段は「媚を売りすぎ!」とツッコミを入れるもりもともこの日はこやまに「今日はええやろ!」と言われたことによって納得していた感すらあったし、その歌唱と演奏にもまたいつもとは違う感情がこもっている感があった。だからこそ、この曲でこんなに感動してしまうとはという感じが確かにあったのだ。
そしてラストはもちろんイントロから「オイ!オイ!」のコールが起きまくる「かわE」なのだが、その最高にキャッチーなメロディによってもちろん大合唱も起こりながら、最後のサビ前には次々にリフトしていく観客たちに向けてこやまが
「立ちリフトって本当は好きじゃないねんけど、中途半端でいいの?行ける!?」
と、名言しないながらも明らかにもっとダイブ来い!と言わんばかりに煽ることによってダイバーがさらに続出するというバンドも観客も燃え尽きっぷりで終わるかと思いきや、
「残り1分30秒!USB!」
と言って急遽「Universal Serial Bus」を追加する。もちろんライブだからこそさらにテンポが速くなっている感もあったのだが、こうして残り時間を確認してすぐにショートチューンを追加するというあたりが本当にさすがである。それはやはりヤバTがキュウソの作った道を歩いてきたバンドであるから。これからもこの2組は一緒にライブをやっていく(コラボライブ企画なんかも控えている)し、キュウソが切り拓いてヤバTが大きくした道をこれから歩いていくバンドだってきっと出てくる。今、この2組はそんな場所にいる。だからこそ互いの主催フェスを続けていって欲しいと思うのはそんなバンドたちが目標にする場所があって欲しいから。何よりもキュウソから貰った恩をずっとちゃんと覚えているヤバTは本当に義理堅いなと思う。そこもまた両者に通じるものだと思うくらいに。
リハ.ネコ飼いたい
リハ.ちらばれ!サマーピーポー
リハ.家
1.あつまれ!パーティーピーポー
2.Tank-top of the world
3.メロコアバンドのアルバムの3曲目くらいによく収録されている感じの曲
4.ええがな
5.ハッピーウェディング前ソング
6.ビビった
7.癒着☆NIGHT
8.NO MONEY DANCE
9.喜志駅周辺なんもない
10.かわE
11.Universal Serial Bus
Writer:ソノダマン
Photo:Viola Kam (V’z Twinkle)