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2025-04-05

【極楽鼠浄土 ライブレポ】⑤BLUE ENCOUNT

⑤ 17:10 BLUE ENCOUNT


この豪華なラインナップの中でキュウソの前、つまりトリ前を務めるのがBLUE ENCOUNTである。そこにはキュウソからこのバンドのライブへの厚い信頼があるということだろう。

 

おなじみのSEで元気良くメンバー4人がステージに登場すると、この日は単身渡米中の辻村勇太(ベース)も参加する全員での4人編成で出演。このバンドはライブごとにガラッとセトリを変えるバンドであるのだが、1曲目が「囮囚(ばけもの)」という実に最近のフェスでは珍しい曲なのはキュウソに「囚」という曲があることへのブルエンなりのアンサーだったりするのだろうか。もちろん読み方や意味合いも全く違うけれど、辻村と高村佳秀(ドラム)によるリズム隊も、江口雄也(ギター)のギターも実にハードさを感じさせる。音の一つ一つが強いというか。それは田邊駿一(ボーカル&ギター)の書いた歌詞に呼応しているものだと言えるのかもしれない。

 


そんな田邊がこのラインナップの中で聴いても「めちゃくちゃ歌声が伸びやかだな〜」と思うような見事な歌唱を聴かせてくれるのは、このバンドの持つ熱血っぷりがタイアップアニメの「僕のヒーローアカデミア」の作品が持つ真っ直ぐな部分と幸福なくらいに結びついた「ポラリス」であり、王道少年漫画の持つ「勝利・友情・努力」という要素をこんなに体現しているバンドはないなと思わせてくれる。

 

すると田邊がハンドマイクになって軽やかにステージ上で踊るようにしながら歌うのは、人生はライブそのものだというような感覚を与えてくれるような生活応援ソング「LIVER」であるが、曲中に田邊が

 

「普段だったらここでちゃんとメンバー紹介するんだけど、今日はキュウソネコカミのボーカルの親友とその仲間たちです!」

 

とこのフェス仕様に挨拶をしたかと思ったら、まさかのそのままキュウソの「家」のカバーに繋がるという、まさに親友だからこその流れを見せてくれるのだが、まさかブルエンが「家」をカバーするとは…という意外性がありながらもめちゃくちゃハマっている感があったのは、田邊にもこのバンドにも確かにコミカルというかユーモアのようなものがあるからだろうか。しかも、ちゃんとそのカバーの後に「LIVER」の最後のパートに戻るというアレンジっぷりも本当に凄い。観客たちもそのアレンジにダイブやサークルという広いライブハウスと言ってもいい楽しみ方で応えていく。

 


 

そのブルエンは先月に最新アルバム「Alliance of Quintetto」をリリースしたばかりであり、その中から「chang[e]」も披露される。歌詞にある通りに「これが僕だ」と堂々と宣言するような曲であり、ブルエンの揺るがぬ芯の部分を感じさせてくれる曲だ。で、その芯の強さとともに、バンドとして鳴らす音の強さを感じさせるのはメンバーそれぞれのバチバチの音がぶつかり合う「VS」。この曲でもそうであるがやはり辻村がいることによって彼の力強い「オイ!オイ!」のコールが聞けるのは実に嬉しいし、それが我々観客をさらに熱くさせてくれる。だからこそ、サビのコーラスフレーズではサークルなどが起こりながらも大合唱が聞こえるのである。

 


 

そんなブルエン屈指のダンスチューン「バッドパラドックス」では、サビでファルセットも駆使して歌う田邊がなんとステージから降りていくと客席の通路を練り歩きながら歌うという、意外にもここまで誰もやっていなかった、確かにキュウソと通じ合う部分を感じさせるパフォーマンスを展開する。当然たくさんの人が田邊に触れようと手を伸ばしたりするのだが、そういう人たちもいながらたくさんの人がこのバンドの鳴らすグルーヴの強さによって飛び跳ねまくっている。確かにこのワールド記念ホールが揺れている感じがあった。

 

そして田邊は

 

「相変わらずクソみたいな社会や世の中だけどさ、もう無理だって思ったら逃げていいんだよ。あなたを殺してまで我慢する必要なんてない」

 

と観客11人に向けて、まるで自分たちのワンマンと全く変わらないかのような熱量を込めたメッセージを放つ。「頑張れ」でも「戦え」でもなくて「逃げてもいい」ということを言ってくれることによって救われる人も間違いなくいる。でもこのバンドの音楽を聴いて、ライブを観てもうちょっと戦ってみようと思う人だっている。受け取り方は違うかもしれないけど、あらゆる人に力を与えてくれるバンドは最後にキュウソへ

 

「バンドを続けてくれてありがとう!」

 


 

と言った。それはやはり親友としてキュウソがいろんなことに直面して、それを乗り越えながらも続けてきた姿を見てきたからであろう。

 

そんな言葉の最後に田邊が歌い始めたのはその瞬間にメンバーも観客も拳を掲げる「もっと光を」で、客席では笑顔と涙にまみれながらダイバーが続出するというこの曲ならではの光景が生み出されている。立ち上がって笑顔で客席を見渡す高村、「オイ!オイ!」と煽りまくる辻村、笑顔でギターを弾く江口、思いっきり声を張り上げて歌う田邊。この曲の全ての音、全ての想いがキュウソと今ここにいる人たちに向けられていた。そうやってキュウソに最後のバトンを全力で渡そうとしている姿を見て、ずっといろんなバンドに対してそうしてきたこのバンドがいつか主催フェスを開催する時が来たら、この曲はどうやって響くんだろうかと思っていた。それをいつか観てみたいとも。

 

 

リハ.DAY × DAY

1.囮囚

2.ポラリス

3.LIVER 〜 家

4.chang[e]

5.VS

6.バッドパラドックス

7.もっと光を

 

Writer:ソノダマン

Photo:鈴木公平

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